当院に来院された際、その猫ちゃんは後ろ足を全く動かすことができず、自分で排泄することも難しい状態でした。今回は、厳しい診断から再生医療の一つである「エクソソーム」という選択肢によって、再び自分の足で歩けるようになるまでの経過をご紹介します。
【動画】治療開始前の状態
1. 絶望的と思われた精密検査の結果
元々は外で生活していたところを保護された仔でした。背中には大きな膿瘍(膿のたまり)があり、レントゲン検査では脊椎の一部が溶けてしまっている像が確認されました。
二次診療施設でのCT・MRI検査の結果、診断は「咬傷(噛み傷)に起因した肉芽組織による脊髄神経圧迫」。非常に重度の神経麻痺であり、外科手術で圧迫を除去できたとしても、神経が回復する可能性は極めて低いという厳しい通告でした。
2. 新たな可能性「エクソソーム治療」への挑戦
標準的な抗生剤治療や洗浄では麻痺に改善が見られなかったため、飼い主様とじっくりご相談の上、補助治療として「エクソソーム(幹細胞培養上清)」の投与を開始しました。
エクソソームとは?
細胞から分泌される非常に小さなカプセル状の物質で、細胞同士の情報伝達を担い、組織の修復や活性化を促す働きがあります。
今回使用したエクソソームは、歯髄由来の幹細胞を培養する過程で得られたもので、神経の再生や修復、骨や軟骨の再生、優れた組織修復作用を持つとされています。
3. 1ヶ月ごとの劇的な変化
合計4回、1ヶ月間隔で投与を行いました。
- 1回目投与: 大きな変化は見られず。焦らず経過を観察します。
- 2回目投与: 後ろ足の機能に徐々に改善が見られ、自力での排尿も認められるようになりました!
- 3回目投与: 長らく閉鎖しなかった背中の傷(瘻管)が、ついに綺麗に閉じました。
- 4回目投与: 一部に感覚の鈍さは残るものの、しっかりと自分の力で歩行ができるまでに改善しました。
【動画】投与後の歩行機能改善
4. まとめと今後の展望
今回の症例は、若齢であったことや、何より飼い主様の献身的なリハビリがあったからこその結果です。一般的に時間が経過した重度神経麻痺の回復は困難とされていますが、エクソソームがその壁を越える助けとなった可能性があります。
※すべての症例に同様の効果が期待できるわけではありませんが、標準治療が困難な神経疾患に対する一つの「選択肢」として、大きな可能性を感じさせる一例となりました。
気になる症状や再生医療についてのご相談は、お気軽に当院までお問い合わせください。