本日は、血液検査で偶然見つかることも多い「高カルシウム血症」についてお話しします。当院を受診された15歳の猫ちゃんの症例を交えながら、その原因や診断、そして「食事」による管理の実際について解説します。

1. なぜ「カルシウムが高い」と良くないの?
カルシウムは体にとって重要なミネラルですが、高すぎる状態が続くと体に様々な悪影響を及ぼします。
- 主な症状: 喉が渇いてお水を飲む量が増える(多飲)、尿が増える(多尿)、元気がなくなる、嘔吐、便秘など
- 長期的なリスク: 腎臓にダメージを与えたり、本来は起こらない場所に石灰沈着(組織が石のように硬くなること)が起こったりします
- 尿路結石のリスク: シュウ酸カルシウム結石などの結石ができやすくなることも知られています
2. 猫の高カルシウム血症、主な原因は?
猫でカルシウムが高くなる原因はいくつかありますが、大きく分けると以下のようになります。
| 主な原因 | 概要・特徴 |
|---|---|
| 特発性(原因不明) | 猫で最も多い原因です。 |
| 腎不全 | 慢性腎臓病に伴って数値が変動することがあります。 |
| 悪性腫瘍 | リンパ腫などの腫瘍が原因で数値が上がることがあります(腫瘍随伴症候群)。 |
| 副甲状腺の異常 | カルシウムを調節する「副甲状腺(上皮小体)」そのものの病気です。 |
| その他 | ビタミンD中毒、脱水、肉芽腫性疾患などが挙げられます。 |
これらの中から「何が原因か」を特定するために、詳細な検査が必要になります。
3. 正確な診断に欠かせない「イオン化カルシウム」
通常の血液検査の項目にある「総カルシウム(tCa)」だけでは、実は不十分な場合があります。
4. 【症例】15歳の猫ちゃんの診断と治療
食欲不振で来院された15歳の猫ちゃん。検査の結果、tCa 14.1 mg/dL、iCa 1.62 mmol/Lと、明確な高カルシウム血症が認められました。
高齢のため腫瘍が心配されましたが、ホルモン検査(PTH、PTHrP)はいずれも低値で抑制されており、画像検査でも異常は見つかりませんでした。これにより、消去法で「特発性高カルシウム血症」と診断しました。
食事療法:ロイヤルカナン「満腹感サポート」
猫ちゃんへの負担を考え、まずは副作用の少ない食事療法から開始しました。食物繊維を豊富に含む「満腹感サポート」に切り替えたところ、1か月後には…
総カルシウム:12.3 mg/dL まで改善!
食欲も安定し、元気に過ごせるようになりました。
5. まとめと今後の展望
特発性の高カルシウム血症は、今回のように高繊維食への変更だけで良好にコントロールできるケースが多くあります。
ただし、数値が安定しても、結石や腎臓への影響を防ぐために定期的な検診(血液・尿検査)による継続的なモニタリングが欠かせません。大きな病気が隠れていることもあり、「少し数値が高いだけだから」と見過ごさず、適切な評価を行うことが大切です。
血液検査でカルシウムが高いと言われたらすぐ治療が必要?
まずはそれが一時的なものか、脱水による見かけのものか、あるいは真の高カルシウム血症かを判別(iCaやホルモン検査など)した上で、原因に応じた適切なアプローチを行います。
この記事のまとめ
- 猫の高カルシウム血症で最も多いのは「特発性(原因不明)」
- 正確な診断には「イオン化カルシウム(iCa)」の測定が不可欠
- 特発性の場合は高繊維食などの食事療法で改善が見込めることがある
- 数値が安定した後も定期的な検査によるモニタリングが必要
